セイリー育緒 写真展

5.31 - 6.11    

京都 gallery main

 

 

150年前の大火に耐えた土蔵。

そのわずか3メートル四方の空間に8人の観客が入り、壁沿いの座布団に並んで座ると

扉が静かに閉じられる。

漆黒と静寂の中にわずかな灯りがともると、舞踏家・今貂子が浮かび上がり

息遣いが伝わる至近の間合いのまま、45分間の舞台『秘色(ひそく)』の世界へと

心がもっていかれた。

 

 

貂子さんに「貂子さんを撮りたい」と告げてから9ヶ月が過ぎた頃、

その45分間を1度だけ私が独り占めさせてもらえることが決まった。

嬉しくて泣いたのを覚えている。

まだ撮影日まで3か月ほどあったので、できるだけ公演に通い、どう撮るか考え続けた。

 

照明が意図的に抑えられているので

感度3200フィルムを使っても露光時間が1秒を超えるような場面が多々ある。

動く被写体を写すにはギリギリのレベルだった。

もちろん「当日は自由に灯りを足して下さいね」と許可を頂いていたが、

無理に照明を足してしまったら緊張のバランスが崩れ、何かが失われるだろう。

どうしてもそれだけは避けたかった。

 

ひたすら暗闇の中の貂子さんを見つめながら、光がフィルムに届く場面を

繰り返しシュミレーションした。

例えば微動だにしない空気の中で、彼女の指だけが少しづつ動くのを見つめながら、

その指の軌跡が光によって銀に刻まれていくのをイメージしてみる。

「今のは写ったな」とか「今のはダメだったな」と様々なシチュエーションを振り分けて

みて、最終的には大丈夫だと判断した。

 

本番の45分間。

8台のカメラと2つのマガジンに装填しておいたフィルムをちょうど使い切った。

今回の展示は、その45分間に撮った作品だけで構成している。

今貂子さんの全身全霊という凄まじい状態に、私も全身全霊で向き合わせてもらった。